過去の話
ホストになってから2年経ち、折半は常に超えるようになっていた。
金には困っていなかった。
毎月給料として50万前後、パチンコで20万以上勝っていた
2年もやっていると、回りはほとんど後輩になる。
仕事が終われば、朝1パチンコ店に並ぶ。
設定6を掴めなければ帰って寝る。
これだけで良かった。月に1度は6を掴めて居たし、金が足りなければ後輩を使って、朝一緒に並んで抽選だけ受けて貰った、飯やキャバクラを奢れば喜んで並んでくれる。3万も払えば1日打ってくれる。
新人ホストはとにかく金がない。というか、すぐ使ってしまう、3万渡しても次の日に無くなっている。人間性というか金遣いが荒いだけではある。
とにかく金さえ払えば大抵の事はやってくれる。そんな人間が何人か常に居た。
自分は服装や付き合いに、そこそこ金が掛かるが、特に使い道が無かった。
贅沢な暮らしがしたいとも思わないし。豪遊がしたいとも思わない。そこそこ満足していた。
そもそも女を抱いて酒を飲むのが仕事である。プライベートじゃ女が抱きたくならないし、休みくらいは酒が飲みたくないのだ。休みの日は他人に会いたくないし、できれば人と会話もしたくない。
だが自分の家には、女に住み着かれていたし、家が休まる場所じゃなかった。
漫画喫茶や映画を一人で見に行ったりしていたが、何時も途中で寝てしまっていた。
昼は昼番のヘルス嬢の所で寝て、夜適当に営業して、飯を食いに行ったり、いけそうならそのまま同伴したりして出勤、家に帰るのは3日に1回。
帰らなければ文句は言われる、家に居る女も月に50は店に来て使っているからだ。
大体店で酔って寝てしまったという言い訳をしていた。
ヘルプで付いた人間に、俺は頑張って酒を飲んで、何時も寝てしまっていると言って貰っていた。
だが2ヶ月に一度くらいは何処かに連れて行っていた。
正直ディズニーランドって奴に、何回行ったか分からない。
何度も違う人間と行くはめになる。ぷーさんなんて何いうか覚えていた。
そんな毎日を送っていると。
慣れてくると刺激が欲しくなる。危ない道をあえて通りたくなる。
こんな事も考えるようになる。
夜出勤して、何の予定もないその日は外にキャッチに出た。
2年も居れば、危険な道くらい分かる。危ない道は本当に危ない。あえてそんな道を見に行きたくなるのだ。
血だらけになっている人間なんて珍しくない。自分はなりたくないが、そういった人間を見に行っていた。煙草の煙が掛かったと言って前を歩いて居たホストは、絡まれて血だらけで倒れて居た。すぐ後ろを歩いて居た俺も煙草を吸っていた。
チーマーだかギャングだか分からないが、喧嘩していた、負けた方は血まみれで倒れて痙攣していたが、それでも蹴り続けていた。
女の子同士で喧嘩していたのか分からないが、道端で土下座して謝っている、あちこち擦り傷だらけだ。
叫び声の方に行って見ると、キャバ嬢風の女が担がれて運ばれていった、そのままタクシーに乗って何処かに行った。
毎日起こるわけじゃないが、こんな事が珍しくも無い。
大通りから少し離れたビルの横に、女の子が二人座っていた。
ミズハ「何してるの?」
女「別になんもしてない」
ミ「暇ならうちの店来ない?初回で5000円だけど」
女「金ない」
ミ「そっか、今日は俺仕事あるから、今度どこか行こうか。名刺渡しとくよ。」
女「分かった」
一応名刺だけ渡しておいた。金が無いというのは皆言う。金があってもいう。
その日の内にキャッチで捕まえて、店に連れて行けるという事はあまりない。
とにかく連絡先を聞いてまめに連絡を取る所から始める。
だが、連絡先は聞かなかった。
若すぎると思ったからだ、おそらく18歳になっていない。店に呼ぶ事は出来ない。
顔は中よりやや下と言った所。
声を掛ける意味も無いが、ただなんとなく名刺を渡した。